病診連携Wの会

地域完結型医療システムが本格化

患者紹介率は大幅アップ

神奈川県横浜市の済生会神奈川県病院は、地域の診療所との間に病診連携ネットワー クを構築、紹介率の向上に向けた取り組みを活発化させている。同院と診療所の医師らが中心となって、患者の紹介・逆紹介・在宅ケア上の問題点について意見交換を行う「病診連携Wの会」を結成してから、10数年が経過した。現場の医師同士の交流が深まるにつれ、同院の紹介率も大幅に上昇するようになった。病診連携を促進させた要因とは何なのか。「病診連携Wの会」の活動を軸に、病院と診療所の思惑を探ってみた。
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「病診連携を強化するためには、現場の医師を巻き込む必要があったんです」。済生会神奈川県病院の吉井宏副院長は、「病診連携Wの会」を結成した経緯をそう説明する。実際に開業医から患者を任されるのは、現場の診療を担当する若手医師。現場レベルでの交流が必要だった。地域で理想的な医療システムを構築するためのシンクタンクをつくろうー地域の開業医と勤務医が数人集まって、症例検討会の立ち上げを決めた。これが、現在の体制へと成長していった。

現在は勤務医と開業医を含め、62人が参加している。年2回、定期的に研究会を開催。患者の紹介や逆紹介など病診連携の問題について討論したり、それぞれに持ち寄ったテーマで演題発表や討論を行っている。次第に、研究会や学会に近い雰囲気が出来上がっていった。最も重要だったのは、関係者が対等な立場で、率直な意見交換できる場を持つこと。勤務医も、開業医も、看護婦も、薬剤師も、この会のなかではイーブンな関係だ。

吉井副院長が病診連携に着目したのには、2つの理由があった。ひとつは、病院経営上の問題。開業医と連携し、紹介患者が増加すれば収入が増える。診療報酬でも、紹介率を評価する仕組みづくりが進んできた。もうひとつの理由は、地域医療システムの構築。医療の中心にいるのは、医療関係者ではなく、患者。患者を中心に診療所と病院の主治医(ダブル・ドクター)が一致・協力するという基本理念があった。

そういった取り組みの成果が出始めてきた。それを明確に示しているのが、紹介率の推移だ。1996年に20.6%だった初診患者紹介率は、97年に33.3%と30%台に上昇、2000年11月には45.3%と、40%の壁を初めてクリアした。

済生会神奈川県病院全体が病診連携の窓口

「済生会神奈川県病院を連携先として選択したのは、受け皿がしっかりしていたからです」。同会の世話人代表を勤める中村胃腸科内科医院(横浜市神奈川区)の中村眞巳院長は、そう強調する。職員の対応も含め、病院全体が病診連携の窓口になっていると、病院側の体制を評価している。

診療所も患者から選ばれる時代。紹介率の向上など病院のメリットが指摘されることが多い病診連携だが、実際には「開業医が得られるメリットも大きい」という。研究会での交流を通 して、最新情報を得ることができるのも、そのひとつだ。

患者に信頼される診療所になるためには、筋の通った経営理念を持ち、高いレベルの 診療を展開することが重要だ。「患者との信頼関係を構築するには、基盤のしっかりした紹介先(病院)を持つことも必要な要素になる」。中村院長は開業医の視点から見た、病診連携の重要性を繰り返し強調。今後は「開業医が時代を見据えながら、病診連携をどう捉えていくのか」が連携促進の鍵になると話している。

患者を中心とした地域完結型医療システム構築を一病院と診療所が対等な立場で、一定の共通 認識を持って連携する。そんな試みが本格的に動き始めている。

 

平成13年2月22日 Japan Medicineより