「テレビ会議システムを用いた地域医療連携講演会」
                      が開かれました


平成15年6月12日       19:00~20:30


武田薬品工業株式会社の ITネットワークシステムを利用して、本社と全国約100箇所の支店、営業所会議室に各地域の病院、診療所の先生の御出席を戴き、直接テレビで結び、活発な討議が行われました。
地域の先生方が、貴重な時間をさいて、現在活躍中、或いは之から活動しようとしている連携システムの構築に少しでもお役に立てれば幸です。
「病診連携Wの会」もこのような討議を通して、さらにより良いシステムを作りたいと願っております。


病診連携Wの会 世話人代表 中村 眞巳(中村胃腸科内科医院)
             山室 渡(済生会神奈川県病院) 
吉井  宏(元代表)      
         世話人一同                 


講演1「病診連携Wの会〜病院側の取組み」(要旨 略)  
              済生会神奈川県病院 院長 吉井 宏


講演2「病診連携Wの会〜診療所の取組み」
              中村胃腸科内科医院 院長 中村 眞巳

(要旨概略)
医療連携の概略については、今更付け加えることはないと思いますが、整理の意味で基本的な事を簡単に纏めました。
基本は機能分化による地域完結型医療をより良い形で患者さんに提供する方法と要約できます。
しかし、実際は極めて多彩な形で多くの連携システムが運営、活動しており、「病診連携Wの会」もその一つに過ぎません。
連携形態については、色々の分類がありますが、一次医療から三次医療に至るまで患者さんの状態とニードにより、古くから必然的に行われてきたいわゆるピラミッド型のものがあります。
これに対して、水平型として、専門外来を中心に連携グループを作って、分科会或いは勉強会を行いながら運営されている形態があります。
診療内容を検討しながら、形態を作り上げていくので、比較的分かりやすいものであり、構成会員のニードと対応できる専門医との組み合わせでありますので、高度の地域医療体制の構築が期待できますし、実際に活動している事例も多いと思います。
またIT利用を中心に作られる医療連携システムも稼働しておりますが、ホームページ的なものから、電子カルテも巻き込んで、高度の医療体制を作り上げられるもくろみも既に一部では運営されております。
理想としては相当高度のものまで出来るはずですが、実際には時間と費用のかかる割には、全国的に成功例は限られているのではないでしょうか。
また、専門病院が地域で専門特化に徹して、病院同士或いは、開業医を包括して、有効に運営している事も既に知られているところですが、これは高度医療と機能分化の面から成功すれば、何処の地域でも、理想的な形態の一つと考えられます。
此のような、背景の中で、我々「病診連携Wの会」が取り組んだ経過を振り返りますと、当初はベッドの確保という連携の原点から始まりました。
入院ベッドを必要とした若い開業医の先生がたが、病院に御願い、または要求しながら、集まった所からと始まりました。
実際に会に発展した経過は既に、多くの機会で報告しておりますので、省略させて頂きますが、当然、時と共に問題と要求、そしてそれに対する解決という繰り返しが、此の十年間の足取りでした。
病院には紹介患者に対する、返事と共に折角送ったのだから、送った患者を返すばかりでなく、病院から退院する患者と慢性期の外来患者の逆紹介の要求も致しました。
そして、病院の持っている高度医療機器と専門医の利用、そして、送った患者、医師に対する対応の問題とこれらに対する評価の問題が総会の議題として討議されました。更に、開業側として急変時と長期休暇の場合の支援体制の整備等よい意味でのエスカレートした要求が出ましたが、病院側は理解を示して医療連携の意味で前向きに解決して今日に至ったといえると思います。
このような問題提起と解決が繰り返されるうちに、相互の信頼が作られていきました。
病院側からの要求により、患者逆紹介用の細かい診療所側の診療内容と要望を盛り込んだマップの作成も出来ました。
これは開業医側の診療レベルの情報開示に結びつきます。
さらに病診連携で効率的な運営と内容の高度化を目指して、「Wの会」として運営しやすいシステムの開発をしました。即日内視鏡検査、肝炎ネット、糖尿病教室等ですが、既に各地でも此のような動きは報告されております。いわゆる、その地にあったオーダーメイドの医療を、開発と改良を繰り返しながら作り上げました。約一年の試用期間を経て問題のクリアを確認して、公開したといういきさつがあります。出来るだけシステムの標準化(つまりクリニカルパス)を目指し、また出来る範囲での支援システムを開発しましたが、いつも注意しなければならないのは、不特定多数の人が使っても問題の起こらない事を確認をすることです。病院の事情を知らないで、いきなりシステムを利用して、「ベッドはいつもあるといいながら応対が出来ていない」とクレイムがついて病院側が説明に上がったこともありました。
システムは一見簡単の様ですが、常に多くの職種の人が関与するので、内容の徹底が無いと問題を起こす可能性がいつも潜んでいることです。相互の理解は絶対条件だと思います。
病診連携の目的は、実際には病院側、診療所側、患者側それぞれが思惑が違いますので、お互いにその目的とするところを忘れないことです。そして、常に相手にとってwelcomeの事を考えながら連携しないと継続は難しいと思います。
 病院側:   紹介、逆紹介の確保。(医療改正の基準のクリアのための目的)
 診療所側:  ベッドの確保と医療レベルの向上、医療事故などの対応
 患者さん側: 信頼の医療への要求
に要約されます。
この基本的事項の中で、一生懸命専門医として多忙に応対している外科の先生に、その行為に甘えて、他科の先生や、歯科医の先生の紹介まで、気軽に頼む先生もいますが、忙しい先生にお願いするのですから、ある程度の節度と限界もあることを考える必要があります。
相手の顔の見えない連携室であれば、通り一遍の事務的な紹介で十分です。しかし、高度の内容の連携を目指すときには、連携の意味を、前もって理解していく必要があります。followする先生の気持ちを考えるべきです。
折角患者さんを紹介しても、診療はしてくれたが、期待していた診療がしてもらえなかったという不満と誤解も生じます。
本来、病診連携は一つの紳士協定であり、暗黙の義務と権利、節度が潜んでおります。義務のみを要求したり、よいところのつまみ食いをすることが続けば、もう一度紳士協定を話し合わなければならないと思います。
ともすると、勤務医の先生から「診療所の医師は患者を丸投げで送ってくる」と言う不満が聞かれますが、心すべきでしょう。
とかく、使用権利のみ主張しがちですが、私どもの会でも会員全員が何らかの義務を課すべきであるという話もかってはでました。しかし、所詮全員には無理な話で、むしろ組織としては、シンクタンクとして連携を開発して、それを医師会はじめ地域の会員に開示することにしました。
さらに、注意しなければならないことは、医療法では医療レベルの上から、自分が出来ない場合は、より高度の医療への紹介を義務づけています。つまり「転医勧告義務」です。
ここに医療連携の必要性がはっきりと謳われております。
これが出来ずに、医療事故、或いは医療訴訟になった時に敗訴になった判例もすでに報告されております。
病診連携に関しては、内容目的は既に殆どの関係者が分かっていながら、実際にこれを進めると、意外に多くの問題が出て参ります。
会の成立にこぎつけるのも大変な努力と時間が必要です。
折角集まって、ある程度の目標を達成したところで、「発展の問題」、「維持の問題」はでてくると思います。
人数が多くなりすぎて、会員数は多いが、実際に活躍する会員はと問われると意外に少ない、此の会は活動しているのだろうか、或いは発展できないのではないか、これからどのようにするべきかということもよく問題になります。
そこで、一体医療連携とは何かという原点に戻ると、意外に多くの問題を元々孕んだシステムと思います。
会員はどのような連携を求めているかという目的の問題があります。
これは会員各自の診療レベルによって、求めるところが異なります。
更に、病院の勤務医と診療所の医師各自についても、連携に対する熱意と目的は、皆同じレベルで持っている訳ではありません。必要度もまちまちであります。
そこで、お互いの気持ちを理解することの大切さがでてくると思います。
連携を組む先生の問題もあります。考え、人柄により連携の内容が変わってきますので、顔の見える病診連携の大切さが強調され、相手の気持ちの見える所まで近づく企業努力を求めました。
特に、地域のニードは多様です。これと診療レベルのマッチングは双方の情報開示と透明性が必要です。しかし、開業医側の診療レベルと内容の開示に関しては意外に情報が乏しいことは指摘されております。
いたずらに、かばいあって、守られる権利のみ主張する護送船団方式の時代は過ぎました。
患者さんを病院に紹介しても、病院が抱え込んでしまうというクレイムは以前よりあり、診療所側の大きな不満でありました。
病院側からは、患者がもどりたがらない、或いは病状から戻すのにふさわしいDr.かどうかという中々言いにくい問題も総会、世話人会で表面化しました。
病状と、患者と病院、診療所の問題を考えると、入院時も退院時も、まず、患者中心であるべきだと思います。医師が患者の動きを規定したり、選ぶのではなく、患者が医師を選ぶという事も考える必要はあります。
Dr.は選択肢は提示しなければなりませんが、選択権は患者にあります。
医療連携のパターンとして従来より言われているI.J.に加えてTと三つのパターンをWの会の世話人の一人である宮川先生は分類提唱しております。ここでは、患者を戻す場合のレベルの高い医師集団の準備を義務づけています。
単なる、病院との往復パターンであるIパターンよりか、専門医を選んで戻すという J或いは、専門と診療レベルを考慮した主治医集団に戻すTパターンも考えられるようになり、其れには開業医側の医療レベルの向上とその内容を中心とした情報の開示が当然求められるようになりました。医療連携マップにエネルギーを費やしたのも、Wの会のHPに情報を乗せてより良い医療を目指しているのもその意味からと理解していただけると思います。これは更にグループとしてのクリニカルパスへの期待も持つとともに、開業医の質の向上も一つの目的義務として、病院側からも、会の中からも言われるようになった時代の趨勢を見逃すことも出来ないとともに、護送船団方式に安易に守られる時代からの決別であり、水先案内を兼ねた先鋭船団への脱皮とも考えられます。動機づけについて:
より良い医療、地域完結型、機能分化といっても、さらに連携の完成には動機づけが大切です。しかし、病院側と開業医側とは共通しているところもありますが、異なるところも確認する必要があります。
1992年の情報提供料から始まった、連携への保険誘導は、
94年のかかり付け医機能とその支援病院への評価が取り入れられ、
96年には200床以上の特定療養費制度、
2000年には紹介外来加算、紹介外来特別加算、逆紹介急性期特別病院加算他手厚く誘導条件を加えてきました。
今年8月には病床規制の問題があります。
このように、病院側にとって、条件をクリアすれば、医療連携は、経営に影響する医療改正と点数配分と結びついていました。入院日数、紹介率、外来数の制約等は、開業医との連携を必須条件としました。此のことは、直接、より良い医療の実現でもあり、地域医療として歓迎されたはずです。
そして、病院として理念の統一をすれば、院内統一は可能でありましょう。
しかし、開業医の動機付けは、直接経営に結びつくのは、情報提供料290点のみです。それも、毎日、多くの紹介患者がいればの話で、実際には、開業医の間で、その利用度には相当な差が出ています。
病診連携の恩恵の度合いは開業医ごとに差があります。
それでは、病診連携へ駆り立てるのは何でしょうか。
直接の経済問題以上に、連携により開業医自らがレベルアップをして、より高度の医療に接し、より良い医療を実現しようとする理念と経営に対する危機感が中心にあったと思います。
すでに一部の開業医は患者から選ばれるための、生き残りの条件の一つと考えるようになりました。
経営には直接結びつかなくても、一つの診療の大切な武器として、病診連携を考えていると思います。よい診療とよい連携を作れれば、患者さんからの評価が高まり、認められて、患者さんが集まるという間接的な経済的恩恵にもつながります。
しかし、連携する開業医側にも、病院側と同じように、連携内容への評価と企業努力に報いるべく、24時間連携体制加算のような更なる保険点数上の配慮も、考えて然るべきと思います。
また、病院側にとっても、開業医のこのような乏しい動機づけにつきご配慮を願いたいと思います。
つまり、今でこそ、病院側は、開業医側の買い手市場に連携の理解を求めて、アプローチしていますが、開業医のニードを真摯に受け入れていただき、何がwelcomeであり、何を望んでいるかを話し合って欲しいと思います。
特に、現在は病床はある程度満たされていますが、病床規制後、120万床から、6-70万床になったとき、急性期に残った病床で果たして、今の連携が続けられるか、また、急性期病床の不足で病院側の買い手市場になるのでは無いかという懸念をもっております。
このような見方からも、「Wの会」はお互いに理解しあえる良きパートナーとして、発展することが出来たと、思っております。
本来、開業医は一国一城の主であり、考え方もことなりますし、病院よりはるかに意思統一の難しさがあります。
具体的には、連携に対する考え方の差があります。自分は自己完結型でよいとか、いまだに、患者さんの癌を見事に診断しても肝心の病院を紹介ができずに、「自分で病院を探してください」というDr.もいます。
また、一方では、一回の情報提供料のみにかかわらず、徹底的に患者さんのために、病院を、更に受け持ち先生を紹介して、入院後も自分の受け持ちのようにベッドを見舞い、受け持ち医に常に病状を問い合わせるというDr.もいます。これは、Dr.の考え方の差であり、其れを一律に強制する事は出来ません。
また、診療所によっては、患者さんの層の問題、要求度の問題もありますので、一概にDr.の考えだけで判断することは出来ません。
このように、連携そのものも、いろいろな因子に左右されながら価値と意義は動くことは避けられないと思います。
連携の方程式は既にでき上がっていながら、いつも、複雑な因子により簡単に解けない原因はこのようにあると思います。
此のような諸条件をクリアして一旦出来上げっても、さらに時代と共に、連携への要求度は変化することも宿命だと思います。
地域内の医療機関の増減、内容の変化、そして、社会状況の変化と共に、医療連携の内容は変わってきます。
今回の病床規制の問題にしても、連携を組んでいた病院が急性期病床から外れれば、連携の意味と必要性は変わってくるでしょう。
組んでいる、相手の医療に対する対応が変われば、連携の形態も変わらざるを得ませんし、今まで組んでいた専門医が転勤その他で変われば、また内容も方針も変わってくることは覚悟しなければなりません。
いかなる変化にも、それぞれが臨機応変に対応できることも必要でしょう。基本は連携を組む当事者の目的、要求、対応の考え方の問題が大切だと思います。そして、地域の最新の医療事情の変動に最大の注意を払う必要があると思います。
これには、医師集団のみでなく、地域で密着して活躍しているMRはじめ多くの医療関係者の情報も真摯にきき、活用する必要があると思います。
此のように、時代は常に医療形態に大きな影響を常に及ぼしながら、医療そのものを変えてきました。
かっての古き良き時代を過ごした先生から、あの時は暮れも、正月もなく、門前市をなすごとく、朝から順番待ちのノートが置かれた当時のあふれるような患者さん達は、いずこへという話もきかれる時代になりました。
しかし、近隣に若い優秀な新規開業医が乱立して、患者の流れは色々の風評を求めて、よいという評判一つで今は、かかりつけ医を変える時代です。
大都会では、新規開店当時多くの人であふれた有名デパートですら、廃業とリストラにあえぐ時代です。また地方の企業城下町のかっての繁華街が、いつの間にかシャッターストリートと化しております。
日本不況時代に、医療関係のみこの不況という経済の流れから離れることは当然不可能です。
一方、欧米の有名ブランドが高い品質を武器に、日本のなかで、繁栄を謳歌している現状にも注目すべきでしょう。
患者さんの「人の命」に対する質の高い医療へのニードは変わりません。
そして、よりよい医療の為に、よりよい連携を作る意味も変わらないと思います。
このことを基本に、いつまでも既存の固定した形態にこだわらず、高い医療の質を求めて、形態、例えば、連携病院も、相手の先生も、組み方の形態も、常に変革することを念頭に置きながら私共もすすみたいと願っております。
究極は連携に携わる人と考え方が基本であると思います。
それゆえに顔の見える病診連携にこだわり、10年の歴史を作ることが出来たと思います。
始めはベッド確保のスタートがいつのまにか、現在の「Wの会」へと発展しました。その過程を振り返ると、非常に多くの因子に左右された事も事実です。しかし、目先の姿のみににとらわれず、「よい医療を求めて」常に基本から離れないように注意しながら、会員の多くの英知と理解と協力により、現在に至ったと思っております。
いくら義務と権利を主張する病診連携の契約書と会則をつくっても、医師同士の理念のこもった紳士協定が基本です。権利のみ主張して利己的に走って、これを守らなければ名前ばかりの連携になってしまうでしょう。
病診連携Wの会は、此のようなシステム作りのためのシンクタンクとして役割を果たし、機能分化による、地域完結型医療と、患者さんへより良い医療の提供を基本に、病院側、開業医側の立場、環境、動機づけの差も尊重して、会員の結束のコーディネイターとしての役割を今後も果たしたいと思います。

参考文献:
武藤正樹:Clinician,511,111,2002
吉井 宏、中村 眞巳: 治療、82,106,2000
中村 眞巳:地域医療を考える会、p10,20001(武田薬品工業株式会社)
中村 眞巳:Clinician,520,104,2003
中村 眞巳:実験治療、670,24,2003