地域医療ネットワークを考える会    

平成13年11月17日           
場所:東京国際フォーラム        

講演要旨        

             病診連携Wの会世話人代表
             中村胃腸科内科医院 中村 眞巳

今や、IT全盛の時代で今更ITの重要性に異論を加える者ではありません。カルテにつ いてもITを使って、1患者1病院から、地域医療として、1患者1地域のカルテ処理も考えられている時代です。この時代にあえて1地区の手づくりの病診連携を取り上げていただきましたが、医療の原点である患者と医師という人を通 した関係を今一度 問い直すのも意義あることと思います。
このような事を頭の隅に置きながら、話を進めたいと思います。 私共の会の存在している神奈川区はJR横浜駅にほとんど接するように立地しており、 黒船到来の江戸時代から既に東海道の神奈川宿として発展してきた土地であります。
昭和40年以来20万の人口の変動はなく、ほぼ成熟した地域になっております。

成立について
このような地域的な背景に育ってきた「Wの会」の生い立ちについて、振り返ってみたいと思います。
今年ですでに21回を迎えるに至りましたが、年2回平均で行ってきましたので、既に10年になります。
今や病診連携は医療用語のキーワードにすらなっておりますが、当時はまだ言葉の意味もはっきりとわかりませんでした。
しかし、病診連携の意義は、患者の診療をしている医師にとっては、何時の時代でも必須であったと思います。
当初、今のようなシステムがありませんでしたので、個々にいろいろの手段を使って、 開業医は入院、専門医への紹介に努力して、また苦労していたのが実情でした。開業医が、気を使い、お願いして、病院の先生に見ていただくがという時代が続いていた訳ですが、果 たして内容はどうかというと、お互いに遠慮、不満、誤解等が続いていたことも確かです。
私ども神奈川区の開業医にとって、当時9医療機関が入院施設を持って対応してくれていました。今でもご協力を頂き感謝しております。
当時は、各自出身校とか出身病院のつてを個人的に使いながらそれなりの苦労をして患者を入院させていただいた時代でもありました。お互い連絡の無いままに当時の済生会神奈川県病院の外科に、患者をお願いしている開業医の若手の先生方の間で、盆暮れの挨拶がてら、軽い食事をしながら集まって外科の先生方と話を繰り返していました。そのうちに、新規開業の先生、若手の先生方で、紹介先に苦労している話が出て、済生会神奈川県病院の勤務医の先生方と一緒にもっと話し合いがしたいという希望が出でて、発足したのがWAKATEの会でありました。
その略称が当初のWの会であります。
紹介相手としてまず外科と連携をもったのは、手術の必要な患者がでた場合、患者を送らなければならないこと、送った患者は手術が終われば退院して、後は抱えこむことがなく帰してくれること、そして開業医と競合しないということが当初はありました。現在はどの科でも安心して紹介できるようになりましたが、接点はそのような事からであります。 当時も今も、送った患者は返してくれるというのがまず病診連携の原則です。しかし、 返す原則と患者によっては返せない現実もしばしばあり、この難しい問題をクリアしていったのが、Wの会の一つの役目でもあったことを、特に後に触れたいと思います。
会合を持つうちに、せっかくの貴重な時間を割くのなら、もっと有意義な時間の使い方はないだろうかということで、組織的に、神奈川区のみではなく近隣の先生方に会員の仲間同士が声をかけて作り始めました。
またこのような会は、製薬会社のMRの方々からも注目されたためか、訪問先からの問い合わせや、入会希望の先生がいるとその仲介に大変的積極的に協力して頂いたことも無視できませんでした。厚く感謝しております。 MRの方々は、日頃先生方を直接お目にかかって接しているために、先生方の事をよく存じております。入会希望等を聞くのには貴重な情報源でもあり、適切な話が聞くことが出来ます。
患者の入院先、紹介先の確保ということで、先生方は集まりました。 今まで顔も知らない同士が同じ考えをもって積極的に集まり始めました。 その範囲は地域内外を問わず、交通アクセスさえよければ、範囲は意外に広がりまし た。
一方、病院の先生方の、まず希望したことは紹介する先生がどんな先生であるか顔を知りたい、直接あって話をしたい、そしていろいろと考え方も交換したいという積極的な考えで当初は集まりました。
実際に集まって、本音の自由な意見交換をしてみるとお互いに問題が山積みしているのに唖然としました。このことは多くの病診連携でまずぶつかる問題だと思います。 開業医側は患者を受け取ってくれる病院の先生方に感謝をしましたが、対応に幾つかの不満が早速出ました。
1. ベッドの確保の問題  
2. 患者にたいする対応の善し悪し
3. 患者の病状の報告に不満
4. 紹介すると患者が退院後にも帰ってこない
など、どの病診連携でも避けることのできない具体的な不満が出て参りました。病院の勤務医側でも退院するとき、退院患者の受け皿としてふさわしい開業医が見つからない場合もあること、場合によっては患者が紹介医に戻りたくないなどという患者の意見、希望にまで立ち入ったお互いに中々言いにくい問題点も出てきました。
ともすると、お互い相手をつるし上げているのではないかという話し合いにもなり、 病院側の上層部の先生方から、若い先生方にはこのような具体的な話はきつすぎるということも、当初はでました。
しかし、それを乗り越え、なぜ患者が、なぜもとの開業医に戻らないか、患者についての意見、治療についての意見、希望の交換がをくりかえしているうちに、お互いに立場を理解するようになり、患者は受け持ち医のものという考え方から、患者が医者を選ぶという患者中心の考え方に問題は移って行きました。そしてお互いに話し合いにより見えない部分が理解できるようになってきました。
一方、開業医は、皆勤務医を経験しているわけで、当初はこんなに開業医の要求ばかり言って果 たして自分が勤務医であったらば、できるだろうかという疑問すら感じる内容も、病院側は配慮して受け入れてくれる事に病院側の理解に感謝と、評価と信頼を高めました。
病院側の忙しさにともすると何時間待ちという事態を患者から聞かされ、開業医が問題提起をしましたが、このような要求にも解決の可能、不可能は別 として、真摯に配慮して頂いた事は病院全体が相当の理解が無ければなかなか解決できないと思っております。
しかし、このような問題提起と議論と希望の交換のうちに、
Wの会はかつてのWAKATEの会から患者の為のdouble doctorのWの会に脱皮する時が来ました。
当事者の病診連携に対する意識が変わってきました。
また、患者、病院、開業医を含め医療を取り巻く環境は大きく変わっていきました。
保険制度の改正とともに、病診連携の有用性と必要性が強調され、情報提供料の設定、 紹介率、在院日数の問題、退院、外来患者の逆紹介の必要性など、開業医にも病院にも医療経済の上から無視できないような時代になりました。
単に患者のための良質の医療の供給だけでなく、経営上の問題も追い風になる一方、 病院にとっても、開業医の紹介を待つだけでなく、慢性患者の外来、入院患者のの整理、逆紹介できる開業医を確保する必要性もでてきて、病院内の整備と連携体制の確立、医師を含む病院職員の意識革命も必要になり、積極的この問題に取り組んで頂いたことは、開業医側にとって非常な励みになりました。

平成13年、第20回を重ねて、会は更に組織として発展して現在に至っております。
総会は学会形式で行われ、当面する問題点を中心に、なるだけ自分たちの意見の述べる場として、外からの講師はなるだけ呼ばないでスライド等も使い気軽な議論の場となるように勤めました。
総会後の懇親会は大切な場で、開業医も勤務医も顔を知りあう場としてなるだけ日頃会いたい人、言いたいことなど和やかに時間が費やせるように、紳士的な場を作るように勤めました。
既に記録集3巻の発行も行っておりますが、大切に足跡を残すように、分担して行っております。
構成メンバーは病院側も入れると約70名以上になりますが、病院側からは原則として各科から責任者と外来、受け持ち医の方々、更に看護婦、事務、パラメヂカル方々にも積極的にでていただいております。
ちなみに、開業医側の病診連携Wの会の構成年齢は図に示すごとく平均年齢45歳、 つまり発足当時10年前は40台前半であったことも大切な要因と思います。意識的には、人口20万の区に、区医師会の開業医だけで160人の会員がいてそれに9病院があるわけですから医師の数は決して少ないわけではなく、診療と経営上の危機意識もそれなりに持っておりましたし、それなりの新しい試みへのチャレンジ精神も持ち、患者への対応も新しい時代にふさわしい考えと、柔軟な適応力も持っていたと思います。 単に医師同士の競争ではなく、協調の精神もあったと思いますし、より良い医療は一人の名医で完結するものではなく地域の中でお互いに協力して行うものであることも理解していました。患者さんは地域の中を動きます。医師同士が協力してより良い医療を提供する姿を患者にを示すことも大切です。
構築の為の条件:
かつてはどこかの会に入っていれば、護送船団方式で守られている時代がありましたが、今では自らが努力して、レベルの高い共同体を作り、運命共同体の一員としての意識を持って、自ら守る時代になりました。
1.共通の目的意識を持つ
2.専門領域を明確にして、良質な医療レベルを持つ
3.地域完結型の共同体として患者に対処する
4.Wの会は単に病診連携のシステムにとどまらず、問題提起と解決をコーディネイ トする組織とシンクタンクの役割も果すことになりました。

さらによりよい病診連携を完成するには単に医師同士だけでは完結するものではありません。患者を我々からお願いするうえにかかわるパラメヂカルをふくめ全てのメンバーが病診連携の意義を理解し無ければならないと思います。
病診連携は単に患者を医師同士で紹介し受け取ることで終わりません。
むしろそこから始まると思います。受け取った病院が患者にどのように対応してくれたか、患者が十分納得のいく医療を受ける事ができたかということが肝心な所と思います。紹介した患者が満足できて初めて完成されます。 今や患者は開業医への評価も、単なる日常診療技術の評価のみでなく、どのような病院や専門医へ紹介してくれて、よい治療が更に受けられるかということが、開業医への付加価値として評価に加えられております。
それだけに、退院後によい病院、よい専門医、よい病院スタッフに恵まれたという感謝の言葉は開業医にとって非常に貴重であり、これも我々に対する評価の対象にすらなってまいります。
このようなことから、勤務医、特に実際の受け持ち医、外来に出ている医師、看護婦、 それにかかわる各種パラメヂカルの理解は大切です。更に、病院と開業医、患者との最初の接点である電話の交換手、受付窓口の役割も大切です。最初の応対が、時には連携にとって致命的な事になることもあり、また患者に大きな安心を与えて寄与してくれることもあります。 このような見地から、総会にはできるだけ実地に関与する方々の出席を歓迎して、問題点を理解してもらうことにしております。
総会の後の懇親会は大切な機会です。
会での討論後、懇親会では日頃お世話になっている同士が、ゆっくりと個人的に問題点、希望、改善すべき点を話し合い、親交を深めるとともに、文章では表せないお互いの理解度を確認できる機会でもあり、それぞれが会で待ちわびたように歓談をしている風景が見られます。
医者同士の話し合いは、夜半にまで至りますが、ともすると単なるなれ合いと飲み会に過ぎないという様に見られがちですが、パラメヂカルの方々の出席により真剣な討論が、意外な所で行われていること、紹介の段階で受付との対応も非常に大切であること等も理解されて大きな進歩となりました。
当初患者紹介連絡、受付は前日までといった時代もありましたが、事務の方々も会に出席して、このような医師の姿を見て、早速、早朝連絡受付も自主的に行い、実際にも朝早くでて待合室で積極的に病診連携の紹介患者に対応している姿をみて、我々も 自分のことのように感謝しております。 以上が、病診連携Wの会の生い立ちと、現状の姿であります。
ここでは、構成員は全て原則的には平等の立場であることを前提にしております。そして全員で役割を果 たしているので、原則的には上下はありません。

広く病診連携という面から見れば、病診連携Wの会の歩みは、一つの実験的な試みと見ることもできますし、試行錯誤をして進んでいるともみえますし、時代の動きとともにその姿は当然変わっていくと考えております。
病診連携を進める上での問題点は当事者同士がまず相手を知ることから始まります。
ここでは、まずお互いの診療、治療方針レベル、考え方を把握することが大切です。
かつては遠くの病院まで、専門の得意な領域と思って紹介しても、学問的な興味しか示さず、肝心の患者への対応がされずに、患者の不評を買うこともありました。
こうなると、病診連携の継続は難しくなります。
今や、患者の権利と我々の義務が問われている時代です。紹介医や受けとる病院への不信は医療への不信につながるだけに、私共は無視することが出来ません。

また、患者は本来平等でなければなりません。
しかし、患者や家族の事情により、患者は時に病院にある程度の希望ををもって入院することがあります。部屋の選定、治療に対する希望事項、その他、特殊な場合には 宗教上の理由から、輸血拒否など、治療上の問題まであり、個々の患者は均一ではな く、全ての扱いを標準化することは出来ません。病院側の立場もありますから全てをクリアすることは出来ませんが、紹介する場合の配慮はある程度しなければなりませんし、入院前にはっきりとかかりつけ医として問題の内容にコンセンサスをとっておく必要もあります。これらを配慮すると、システムは簡単に一本化出来ません。更に個人の情報はプライバシーの問題もかかわりますからより複雑になります。
このような問題解決に日頃、顔を見ながら話し合うことの大切さの意味は大きいと思います。

ここで、
顔の見えない病診連携
と見える病診連携にという観点から更に見てみたいと思います。
まず見えない病診連携として;
病診連携で実際に紹介先を選ぶ場合、従来から、個人的に紹介する方法があります。
電話、FAX等を利用して、配付されたパンフレット等で病院をさがして病診連携室を通 しての方法も各地で普及しております。
またさらに、HPとかe-mailを使っての紹介システムから高度のITを利用し、電子カルテから患者のデジタル情報まで送る方法まで入れると、多彩 な方法が試みられております。これは広い分野の人からのアプローチが期待でき、能率的な運営が期待できますが、実際のシステム作りに膨大な資金が必要であり、またその運営度と貢献度にはまだ今後の課題は残されております。
HPは済生会神奈川県病院にも、Wの会にもあり、それなりの役割を果たしておりますが、しかしなぜHPとかE-Mailだけでは病診連携が当初すすまなかったか、考えてみたいと思います。
インターネットの普及と有用性は今更論を待たないところです。
確かに、インタ−ネットで病診連携のキーワードを呼び出すと、全国で膨大な数の病院名が呼び出せます。全国各地でいわゆる病診連携は急速に広がり、システム自体はすばらしいものがあります。
患者、住所、疾病などをインプットすれば、確かに選択に迷うほどに病院の名前がでてきます。、それなりに利用すれば、不自由しないだけのインフラは出来ているはずです。
しかし、銀行、宅配、ホテル等と同じ様に医療がサービス業と言われていても、一部を除いて、患者の送る先の選定に、単なるパソコンのインプットだけで安心して病診連携が完結できるでしょうか。
物とか、金額の移動はITで完結できる十分のデーターが送れますが、患者、医師、病院の選定は、現在普及しているデーターのみで完結できる内容ではありません。単なる病名、検査データのみではなく、患者の個人情報、受け持ち医に対する期待事項、 受け取る医師の考え方、さらには患者の選択意志と希望まで考えると、微妙なそして 目に見えない膨大な情報の応酬があります。かってのようにただ入院させれば由という時代は過ぎました。インフォームドコンセントをふくめ患者の了解が必要な時代です。簡単に選択することには躊躇することがあり、また医療過誤、医療訴訟という所 まで複雑な問題も含んで参ります。電柱広告、駅の広告は氾濫しておりますが、いくら知名度を得ても口コミにはかないません。患者を集めたり、送ったりするということとは簡単な事ではなく、知名度と内容とは別 の次元の問題であります。

この観点から見える病診連携としてのWの会を見ると;
まず医師同士がお互いに知りあい、患者をどのように考え、どのように診療し、送った場合どのような内容の医療が受けられ期待ができるか等の問題がクリアされます。
患者に送る先の情報を説明して、了解を得ることが出来ますし、問題が起これば責任をもって対応ができます。
さらに患者を送る場合、相手の医師にとってできるだけwelcomeの患者を送れる事も大切で、問題の起きないように了解を得ることも可能です。
お互いの、得意、不得意の分野も知ることが大切で、無理のないような診療ができるような情報交換の重要性があります。
このような情報内容の交換を含め、お互い顔を合わせて理解して、責任を共にする運命共同体として認識が大切です。
つまり、単なる宅配便的な患者の紹介以上のものを要求したことも一因と思います。 確かに、スタンダード化した病診連携は重要な形態の一つと思いますが、時代は今やテーラーメイドの医療の時になり、個々の求める医療を行う事も求められております。

21回になり、現在はようやく総論から各論に話が進んでいくようになりました。
総論的に私共が考えている病診連携の意味は
1.患者にとって
かかりつけ医に日常かかり、入院の必要なときに安心して、任せられる。 高度の専門医療にかかれるかかりつけ医と病院とを信頼して、安心した医療を受けられる。
2.開業医にとって
入院ベッドを保証してもらえる。
専門と高度医療機器を使ってのよりよい医療ができる。患者も、紹介医療機関を含めて開業医を評価している時代であります。
医療事故、医療訴訟の時代にあって、個人で完結できる医療は限られ、ダブルチェッ クを兼ねたダブルドクターとして信頼を得ることは、事故を避けるためにも大切であ る。ここに当初のWAKATEの会はより高い機能目的を持ったdoubledoctorの会へ発展したと思います。
更に、新進気鋭の若手の勤務医の先生方と気軽に接することは、進歩する近代医学を肌で感じるということで、啓蒙の機会を与えられる事も開業医にとって大きなメリッ トであり、また勤務医の先生方はとかく開業医にたいする偏見もありますが、お互い医療界の中で生きていく中で、身近な運命共同体として生きていく、相互理解の大切さを次第に感じるようになって来たと思います。
医療経済の上からも、紹介にも保険加算が認められ、医療資源の有用利用の面からもあるべき姿になりつつある。
3.病院にとって  
病診連携を通して病院スタッフが地域中核病院の自覚と基本理念を理解し確立する様になりました。 
紹介病院の役割を果たし、逆紹介の問題が出てきたときに、安心して、患者の納得できる開業医に渡す事ができるようになりました。
紹介率の問題、外来患者の整理、ベッドの有効利用等診療体制の安定に寄与し、医療経済からも、日常診療の上からも、病診連携の意義は大きいと思います。

10年の経過で、当初紹介率は20%前後であったのが、40%を越える様になったのは、外科、内科が主な紹介先であったのが、他科にも安心して紹介できるようになった病院側の努力も非常に大きかったと思います。特に若い先生方はローテイションでくるので、各科の責任者の先生も病診連携を理解してもらうことが大変であるということを聞いておりましたが、最近は新任の先生に当たっても、非常にスマートに受け取ってくれるのにはこちらのほうも感心しております。
やはり、それだけの土壌の作成には時間がかかるということだと思います。

実際にはこの間、空床管理の問題、連携室の設置、逆紹介の推進に大きな努力がなされ、今年度の病床利用率は99.8%に達していると承っております。
さらに開業医のために夏休み、年末年始の急患、緊急患者の登録により病床の優先確保など、開業医の意見を積極的に取り入れ信頼をましていきました。
特に、この制度は重症患者や在宅で急変が予想される患者を前もって登録して、長期休暇の際、かかり付け医がいなくても患者が直接病院に連絡して病院側で受け取ってくれるので安心して休めるという思いやりの制度で感謝されております。
また、御手元に配られている「医療連携手帳」も世話人の発案で作り上げ、 患者紹介にも使っております。ご希望がありましたら、ご利用ください。 地域密着型の病診連携としてはWの会はそれなりの役割を果たすことができていると思います。

以上をまとめますと、
済生会神奈川県病院は、人口20万の区の中核病院として、ある程度の高度医療の設備があり、我々開業医として、気軽に、相談にも入院にも門戸を開いて受け止めてくれる勤務医の先生方がいる。先生方のみでなく、事務、窓口、パラメヂカル等どの切り口から切っても、我々の病診連携についてある程度の理解がえられ、患者との対応も満足できるレベルにある。これには、Wの会の総会で、お互いに顔を合わせて、気心が知れるまでに相当の時間がかかったことと、お互いの問題点を理解しながら解決をしてきた結果 であろうと思います。
実際には、済生会神奈川県病院もHPで紹介システムを公表しておりますので、病院としては決してクローズなシステムとはしておりません。
40%の紹介率を得たことは、病院側としての信頼を得るだけのシステム作りに成功したというようにもとれます。
400床、500名の職員、1日外来1200名、の病院にとって、開業医約60名の会員だけで40%の紹介率を満たしてわけではありません。Wの会の会員以外の、多くの近隣の開業医の期待に耐えられる病診連携を病院ぐるみで努力したものと私共は評価しております。
病院側としては、所謂シンクタンクとして、Wの会の意見、提言を取り入れ、医師をはじめ全職員を開業医のレセプターとして育て上げたと思います。

目下、このように病診連携をある程度達しましたが、今後の方針については、普遍化或いは広域化と専門化の問題を考えております。

人口20万程度で、この程度の規模の医療機関の会では、まずWの会の運営はそれほど問題も起きずに運営できていますが、330万の横浜市規模で、このような病診連携が出来るかは、全く別 の問題が起きます。
時折、遠くの大病院から病診連携のお話がでまいりますが、まだ簡単には解決が出来ないのが現状だと思います。
我々が求めるきめ細かい、医療機関の情報公開と、それにITその他情報システムを誰でも身近なものとして活用できる病診連携システムができれば、普遍化、広域化の可能性もあると思いますがまだ多くの問題があると思います。例えばITでシステムは出来ても、IT使用に対する肝心の人の姿勢の問題もあります。
更に、各病院にもそれなりの経営方針があり、対応レベルも色々あります。見ず知らずのユーザーのアクセスしたニードは簡単には満たせない事もあると思います。
インターネットでも、携帯電話でも情報は氾濫している時代ですが、トラブルも少なくありません。安易な情報提供よりは、時間がかかっても問題の起こさない慎重なシステムの構築が大切と思います。
特に、緊急時の対応の善し悪しは、開業医にも患者さんにも時には致命的にもなりますのでリアルタイムの的確な情報と、適切な対応を期待いたします。
将来の夢として、個々或いは特殊な疾病単位、或いは地域単位でしっかりしたシステムが完成し、患者に信頼される病診連携が広く普及すれば、インターネットのプロバイダーの様に、それらを結びつけて広く病診連携を構築することも可能とおもいます。
病診連携の基本は地域医療にありますが、特殊な疾患とか、患者さんが遠くへ移動する場合、それぞれの確立した広域化した病診連携に乗せれば、有効な医療資源として利用できますので、ITを中心にいずれ望まれる物となるとおもいますし、期待いたします。
後者は、いわゆる疾病による分科会を作っていこうという考えであります。多くの病院でも専門医との連携は勉強会、研究会を通 してある程度普及していると思います。 私共も循環器、肝臓疾患、糖尿病、神経病疾患などを中心に進めております。
疾患ごとに、病院の役割と診療所の役割を明確にして、日常診療は開業医が、専門的チェックは定期的に病院で行うシステムであります。
特に開業医にとって日常診療の上からも専門医との交流は診療レベルの向上を兼ねて大切な事ですので、積極的に病診連携の目玉 的な部門として進めております。
病院側も積極的に協力して、消化器検査などは患者が紹介状をもって食待ちで受診すると、即日に返事を書いて返すという即日内視鏡とか高度医療機器の開放を兼ねてのサービスをして、病診連携の分かりやすい姿を示し、連携の確立に大きな役割を果 たしたことを付け加えます。

病診連携の究極の目標は一人の名医の医療から、地域完結型医療システムによる医療レベルの確保と医療資源の有効利用にあると思います。
病院側も開業医側も色々な考えの先生がいて、それぞれの考えでITの利用も含めた多彩 なシステムが動いております。単なる紹介制度程度のものから、地域をしっかりと包括して、サテライトシステムのようにまとめあげる所までも考えられていると思います。
しかし、病診連携は理論と現実とは人が介在しているだけに、其の内容と質を考えると、簡単な物ではありません。
システム自体の構築は、資金と時間が許されれば、理論的にはいくらでも作ることは可能でしょう。しかしをそれを動かすのには組み込む思想と、それを運営する人が最終的には問題だと思います。
特に、医療政策の変革とともに、制度の改正、医療費削減、医師過剰時代、開業医の急増、医療訴訟、医療過誤の問題などを含め、私共を取り巻く環境は急速に変化しております。
これからは、しなければならない医療、したくても出来ない医療、してはならない医療など多くの選択肢がでてくると思います。
患者も医師もかっての良き時代の医療とは全く異なった考えで対応しなければならなくなり、変化の度に、それに適応する医療を考えなければならなくなりました。それに耐えられるような、病診連携の構築もこれからの課題でありましょう。
今後私共は、顔の見える病診連携を基盤として、さらにITを有効に利用して、医療環境の変化を見極めながら、そこに示された多くの選択肢を慎重に見極めながら、病診連携構築のシンクタンクとしての役割をはたしながら進みたいと思います。
20万の地域医療に根ざしたWの会はささやかな発展途上の会でありますが、参考になれば幸いです。